「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」が改訂されました。

令和8年1月、中小企業の取引現場で必須となるガイドラインが改訂されました。
その名も――
「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」
発注者・受注者双方が適正な価格交渉を行い、無理な値下げを避けるためのルールです。

そもそも“労務費転嫁指針”って何?

この指針は、公正取引委員会と内閣官房が共同で策定した価格交渉の行動指針
中小企業が大企業と取引する際、コストの根拠となる労務費をどう価格に反映させるべきかを整理しています。

なぜ、今改訂された?

今回の改訂は次を受けて行われました:

☑ 下請法の名称・対象が変わる
(令和8年1月1日施行で法律名が変わり、呼称も整理された)

☑ 公正取引委員会の調査を踏まえた最新の実務対応例を追加
(実際の現場での交渉事例、転嫁判断のポイントなど)

つまり、令和8年問題への対応として今後ますます重要となる内容です。

中小企業が実務で押さえておきたい3つのポイント

① 価格交渉は「労務費の積算根拠」を明確に

売上単価交渉の際、ただ単に「値段を下げてください」と言われても、経営者側としては利益圧迫につながり死活問題です。
根拠として使えるのが「労務費の正確な積算データ」です。

➡ 人件費だけでなく、社会保険料、残業代、福利厚生、教育訓練費なども含めること。


② 交渉は“感情論”ではなく“説明責任”で勝負

合理的な説明ができれば、値下げ圧力に屈しない交渉力につながります。
指針には、合理的説明のために何を示すべきか の行動例が掲載されています。

例えば:

  • 「どの単位作業にどれだけ人手がかかるか」
  • 「標準時間と実績時間の差異」
  • 「法定外福利厚生の費用構造」

こうした数値や根拠があるだけで説得力は大きく変わります。


③ 発注側・受注側の共通言語を作ること

価格交渉は“負けたら終わり”の戦いではありません。
取引を継続するための健全な関係を作ることが重要です。

そのために:

✔ 指針を双方で共有
✔ コスト情報の提示ルールを合意
✔ 合理的説明のための基準を統一

こうしたルールを事前に決めておくだけで、交渉はスムーズになります。


何が変わる?中小企業経営者への影響

1.取引価格の交渉:労務費の積算根拠に基づく交渉が必須に

2.価格設定の透明性:社内データの整理が必要

3.業務管理:交渉の根拠として労務管理の精緻化が求められる

・価格だけで勝負する時代は終わりました。
“価値ある労務費の根拠” を持つことが、次の時代の交渉力になります。


まとめ:なぜ今、この記事を読むべきか?

✔ 発注側・受注側どちらにも関係する法的なガイドラインが改訂
✔ コスト構造の透明性が求められる時代へ
✔ 中小企業が価格競争から脱却する強力な武器になる

指針の理解は、ただの法令対応だけではありません。
「価格交渉力を強化する経営戦略」そのものです。
以下に、FAQも記載をいたしますので、ご参考下さいませ。

指針を守らないと罰則はありますか?

直接の罰則はありませんが、公取委の調査や行政指導の判断材料になります。実務上は無視できない基準と考える必要があります。

労務費転嫁のために、どこまで資料が必要ですか?

厳密な原価計算より、「合理的に説明できる根拠」があれば十分です。人件費や社会保険料の増加などを数字で説明できることが重要です。

小規模企業でも対応は必要ですか?

はい。人件費比率が高い小規模企業ほど重要です。指針は価格交渉時の「公的な後ろ盾」として活用できます。

詳しくは、こちらをご覧ください。

<「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の改正について(公正取引委員会)>
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2025/dec/202512_roumuhi.html

なお、令和8年1月8日、経団連からこの指針の改正を周知するためのお知らせがありました。ご確認ください。

<「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」改正に関するお知らせ>
https://www.keidanren.or.jp/announce/2026/0108.html

ドリームパーソル社労士事務所
代表 野田 千秋

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