「退職金制度は、このままで良いのだろうか?」
「若手社員は本当に退職金を重視しているのだろうか?」
「賃上げと退職金、どちらに投資すべきか?」
近年、多くの中小企業経営者から、このようなご相談をいただきます。
そんな中、東京商工リサーチが実施した「2026年『退職金』に関するアンケート調査」では、退職金制度のあり方が大きく変化し始めていることが明らかになりました。
調査によると、2023年以降に退職金制度を「増額・導入」した企業は7.8%である一方、「減額・廃止」は1.9%でした。また、退職金を前払いする形で月額給与を引き上げる企業も増えており、「退職金か給与か」という二者択一ではなく、自社の採用戦略や人材定着戦略に合わせた制度設計が求められる時代になっています。
社労士・採用定着コンサルタントとして、この調査から最も強く感じるのは、
「退職金制度を見直すこと」ではなく、「社員から選ばれる報酬制度を設計すること」が重要になっているということです。
退職金制度は「ある・ない」ではなく「目的」で考える
以前は、
「退職金制度がある会社=良い会社」
というイメージがありました。
しかし現在は、働き方や価値観が大きく変化しています。
終身雇用が当たり前ではなくなり、転職も一般的になった今、若い世代の中には、
「30年後の退職金より、今の生活を支える給与を重視したい」
という考え方も増えています。
一方で、長く働きたい社員にとっては、退職金制度が安心感や会社への信頼につながることも事実です。
だからこそ重要なのは、
「制度があること」ではなく、「自社の人材戦略に合っていること」です。
なぜ今、退職金制度が見直されているのか?
背景には、複数の経営環境の変化があります。
① 賃上げの流れ
人材確保のため、多くの企業が基本給を引き上げています。
その結果、基本給を基礎に算定する退職金も増額されるケースが増えています。
② 若い世代の価値観の変化
「将来より今を大切にしたい」
「資産形成は自分で行いたい」
という考え方が広がり、NISAやiDeCoなどを活用する人も増えています。
そのため、退職金よりも毎月の給与を重視する傾向が見られます。
③ 採用市場の変化
求人票を見たとき、多くの求職者が最初に確認するのは、
- 月給
- 年収
- 休日
- 働き方
です。
退職金制度だけで応募が増える時代ではなくなっています。
社労士が考える「退職金制度」の本当の役割
退職金制度には、
単なる老後資金という役割だけではありません。
企業にとっては、
- 長期勤続への動機づけ
- 優秀な人材の定着
- 福利厚生の充実
- 企業ブランドの向上
という重要な役割があります。
しかし、その効果を発揮するためには、
社員が制度を理解し、価値を感じていることが前提です。
制度があっても、
「内容を知らない」
「将来受け取れるイメージがない」
では、採用や定着にはつながりません。
中小企業が今こそ考えたい「報酬制度」の見直し
① 自社の採用ターゲットを明確にする
若手を採用したいのか。
長期勤続者を増やしたいのか。
その目的によって、最適な制度は変わります。
② 給与・賞与・退職金をトータルで設計する
退職金だけ、給与だけではなく、
社員にとって分かりやすい総報酬設計が重要です。
③ 企業型DC・iDeCoなども選択肢に
退職金制度だけでなく、
企業型確定拠出年金(企業型DC)やiDeCoへの支援など、多様な資産形成制度を組み合わせることで、社員満足度の向上にもつながります。
④ 人事評価制度との連動を考える
退職金制度を長期勤続だけでなく、
役割や成果も反映する設計にすることで、社員のモチベーション向上につながります。
⑤ 制度の「見える化」を行う
制度を導入して終わりではありません。
社員説明会やライフプラン研修などを通じて、
制度の価値を理解してもらうことが重要です。
社労士・採用定着コンサルタントとして伝えたいこと
これからの時代、
採用競争は「給与が高い会社」と「退職金がある会社」の勝負ではありません。
本当に選ばれる企業は、
「社員の将来まで考えてくれる会社」です。
そのためには、
- 適正な給与
- 納得感のある評価制度
- 将来への安心
- 資産形成支援
- キャリア形成支援
を組み合わせた「総報酬」の考え方が欠かせません。
まとめ|退職金制度は「残すか、なくすか」ではなく、「どう活かすか」
今回の調査は、退職金制度そのものが不要になったことを示しているわけではありません。
重要なのは、
「退職金制度をどう設計すれば、採用力と定着力の向上につながるか」という視点です。
企業規模や業種、社員構成によって、最適な制度は異なります。
社労士・採用定着コンサルタントとして私たちは、
- 退職金制度の新設・見直し
- 中小企業退職金共済(中退共)や企業型DCの導入支援
- 人事評価制度との連動設計
- 賃金制度・福利厚生制度の見直し
- 採用力・定着率向上を見据えた総報酬制度の構築
まで一貫してサポートしています。
退職金制度は、過去の慣習ではなく、未来の人材戦略として見直す時代です。
「給与か退職金か」という二択ではなく、自社の理念や採用方針に合った制度を設計することが、これからの中小企業の競争力につながるでしょう。
参考資料
<2026年「退職金」に関するアンケート調査(東京商工リサーチ)>
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202961_1527.html
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