令和8年7月7日、厚生労働省は「令和7年度 個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表しました。
今回の結果から見えてきたのは、職場の人間関係や労働条件をめぐるトラブルが依然として高水準で推移しているという現実です。
特に注目すべきは、「いじめ・嫌がらせ」に関する相談が14年連続で最多となったことです。
これは、大企業だけでなく中小企業にとっても決して他人事ではありません。
今回は、社会保険労務士の視点から、調査結果のポイントと企業が今取り組むべき対策について解説します。
個別労働紛争解決制度とは?
個別労働紛争解決制度とは、労働者と事業主との間で発生した労働条件や職場環境などに関するトラブルを、裁判によらず迅速かつ円滑に解決するための制度です。
制度は主に次の3つで構成されています。
- 総合労働相談(労働相談窓口)
- 都道府県労働局長による助言・指導
- 紛争調整委員会によるあっせん
企業にとっては、労務トラブルの「早期発見・早期解決」を図る重要な仕組みとなっています。
総合労働相談は18年連続で100万件超え
令和7年度の総合労働相談件数は、
119万8,010件
となり、18年連続で100万件を超えました。
この数字は、職場でのトラブルや悩みが依然として多く発生していることを示しています。
人手不足や働き方の多様化が進む中、労務管理の重要性はますます高まっています。
「いじめ・嫌がらせ」が14年連続で最多
民事上の個別労働紛争に関する相談内容では、
「いじめ・嫌がらせ」
が55,614件となり、14年連続で最多となりました(前年度比1.1%増)。
企業ではパワーハラスメント防止措置が義務化されていますが、それでも相談件数が減少していないことから、
- 管理職教育の不足
- コミュニケーション不足
- 指導とハラスメントの境界が曖昧
- 職場風土の問題
などが依然として課題となっていることがうかがえます。
「労働条件の引下げ」と「解雇」に関する紛争も増加
今回の公表では、
助言・指導の申出で最も多かったもの
労働条件の引下げ
1,220件(前年度比10.6%増)
あっせん申請で最も多かったもの
解雇
892件(前年度比12.6%増)
物価上昇や最低賃金の引上げなど経営環境が大きく変化する中で、人件費の見直しや雇用調整に伴うトラブルが増加していることが読み取れます。
社労士が考える「労務トラブルを防ぐ3つのポイント」
① ハラスメント対策を「研修だけ」で終わらせない
ハラスメント防止研修を一度実施するだけでは十分ではありません。
重要なのは、
- 管理職への継続的な教育
- 相談窓口の整備
- 定期的な職場アンケート
- 面談の実施
など、相談しやすい職場環境をつくることです。
② 就業規則・人事制度を定期的に見直す
労働条件の変更や評価制度が曖昧なままでは、従業員との認識のズレが生じやすくなります。
次のような制度を定期的に見直しましょう。
- 就業規則
- 賃金規程
- 人事評価制度
- ハラスメント防止規程
- 相談窓口体制
「ルールの見える化」は、トラブル予防の第一歩です。
③ 管理職のマネジメント力を高める
労務トラブルの多くは、制度ではなく「人」と「コミュニケーション」に起因します。
管理職が適切な指導方法や部下との接し方を身につけることで、
- ハラスメント防止
- 離職防止
- エンゲージメント向上
- 生産性向上
につながります。
社労士から経営者へのメッセージ
今回の調査結果から分かることは、
「労務トラブルは特別な会社だけで起こるものではない」
ということです。
人手不足が続く今、企業にとって最も重要な経営資源は「人」です。
だからこそ、
- 人が辞めない職場づくり
- 公平な人事制度
- 良好なコミュニケーション
- 管理職教育
に継続して取り組むことが、企業の持続的な成長につながります。
社労士は、労務トラブルが起きてから対応するだけでなく、**「トラブルを未然に防ぐ仕組みづくり」**を支援する専門家です。
今こそ、自社の労務管理を見直し、「安心して働ける職場づくり」を進めてみてはいかがでしょうか。
よくある質問(FAQ)
Q1. 個別労働紛争解決制度とはどのような制度ですか?
A. 労働者と事業主との間で生じた労働条件や職場環境などのトラブルについて、「総合労働相談」「助言・指導」「あっせん」を通じて、裁判によらず迅速な解決を図る制度です。
Q2. なぜ「いじめ・嫌がらせ」の相談が多いのでしょうか?
A. ハラスメント防止措置が義務化された後も、コミュニケーション不足や管理職の指導方法、職場風土などが原因となり、相談件数は14年連続で最多となっています。
Q3. 中小企業が労務トラブルを防ぐために最初に取り組むべきことは?
A. 就業規則や人事評価制度の見直し、ハラスメント相談窓口の整備、管理職研修の実施など、トラブルを未然に防ぐ仕組みづくりから始めることが重要です。
参考資料
<「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します>
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00235.html
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