「求人を出しても応募が来ない…」
「採用しても数年で辞めてしまう…」
「育児や介護を理由に優秀な社員が退職してしまう…」

このような悩みを抱える中小企業は年々増えています。

こうした中、厚生労働省は「多様な正社員制度の取組事例集(2026年3月版)」を更新し、人材採用や定着に成功している企業の事例を公表しました。

事例集では、勤務地限定正社員、職務限定正社員、短時間正社員などの制度を導入し、採用力や定着率の向上につなげた企業の取り組みが紹介されています。制度導入の背景や設計の工夫、運用上のポイントまで具体的にまとめられており、これから制度導入を検討する企業にとって参考となる内容です。

社労士・採用定着コンサルタントとして、この事例集を見て改めて感じたのは、

「働き方の柔軟性」は、もはや福利厚生ではなく企業の競争力そのものになっているということです。


人材不足の原因は「採用できないこと」だけではない

多くの経営者は、

「求人広告を改善しよう。」
「給与を上げよう。」

と考えます。

もちろん重要な取り組みです。

しかし、採用現場ではもっと大きな問題があります。

それは、

「働き続けられないから辞める」

ということです。

育児、介護、通院、転勤、家庭の事情…。

働く人のライフスタイルは多様化しています。

従来の「フルタイム・転勤あり・全国勤務」という働き方だけでは、多くの優秀な人材を採用・定着させることが難しくなっています。


「多様な正社員制度」とは?

多様な正社員制度とは、正社員としての雇用を維持しながら、働き方に一定の柔軟性を持たせる制度です。

代表的な制度には、

  • 勤務地限定正社員(転勤を限定)
  • 職務限定正社員(担当業務を明確化)
  • 短時間正社員(育児・介護等に配慮した短時間勤務)

などがあります。

これらは「正社員か非正規社員か」という二者択一ではなく、多様な働き方を認めることで、人材の確保と定着を図る制度です。


社労士が考える「制度導入の本当の目的」

多様な正社員制度は、

「社員に優しい制度」

というイメージを持たれがちです。

しかし、企業経営の視点では、

最も効果的な採用・定着戦略の一つです。

制度導入によって期待できる効果には、

  • 優秀な人材の採用
  • 離職率の低下
  • 育児・介護による退職防止
  • 女性活躍推進
  • 高齢社員の活躍
  • 外国人材の定着
  • エンゲージメント向上

などがあります。

つまり、

「社員のための制度」ではなく、「会社が成長するための制度」なのです。


採用に成功している企業の共通点

採用・定着支援を行う中で感じるのは、採用がうまくいっている企業には共通点があるということです。

① 働き方を社員が選べる

ライフステージに応じて働き方を選択できる企業は、社員の安心感が高く、長期雇用につながっています。


② 人事評価制度が整っている

勤務時間ではなく、

役割や成果で評価する仕組みがあるため、

短時間勤務でも公平感があります。


③ 管理職が制度を理解している

制度はあっても、

「使いづらい雰囲気」

では意味がありません。

管理職の理解が制度活用の鍵になります。


④ 定期的な対話を行っている

制度は一度導入して終わりではありません。

定期面談を通じて、

社員の働き方や将来の希望を確認することで、離職を未然に防ぐことができます。


中小企業が今すぐ取り組むべき5つのポイント

① 現在の就業規則を見直す

多様な正社員制度を導入するには、就業規則や賃金規程などの整備が欠かせません。


② 人事評価制度を整備する

勤務時間ではなく、役割・成果・行動を評価できる制度へ見直しましょう。


③ 管理職研修を実施する

制度を活かすには、管理職の理解と運用力が重要です。


④ キャリアパスを明確にする

短時間勤務や勤務地限定でも、将来の成長イメージを持てる仕組みを整えましょう。


⑤ 「制度を作る」ではなく「制度を使える」会社にする

制度は導入するだけでは効果がありません。

社員が安心して利用できる職場風土づくりこそが成功の鍵です。


社労士・採用定着コンサルタントとして伝えたいこと

これからの採用市場では、

「給与が高い会社」が選ばれるとは限りません。

むしろ、

「自分らしく長く働ける会社」

が選ばれる時代です。

多様な正社員制度は、そのための有効な手段の一つです。

しかし、本当に重要なのは制度そのものではありません。

制度を活かし、

  • 人が辞めない職場をつくること
  • 一人ひとりの能力を最大限に引き出すこと
  • 多様な人材が安心して活躍できる環境を整えること

これこそが、企業の持続的な成長につながります。


まとめ|多様な働き方は「コスト」ではなく「未来への投資」

人口減少・人材不足が進む中、「従来どおりの働き方」だけでは優秀な人材を確保することは難しくなっています。

一方で、多様な正社員制度を導入し、柔軟な働き方を実現している企業は、採用力や定着率を高め、人材不足への対応力を強化しています。

社労士・採用定着コンサルタントとして私たちは、

  • 多様な正社員制度の設計・導入支援
  • 就業規則・賃金規程の整備
  • 人事評価制度の構築
  • 管理職研修
  • 採用力・定着率向上支援

まで一貫してサポートしています。

これからの時代に必要なのは、「働き方を会社が決める」ことではなく、「社員が能力を発揮できる働き方を会社がデザインする」ことです。

それこそが、人材不足時代を勝ち抜く中小企業の新しい経営戦略ではないでしょうか。

参考資料

<多様な正社員制度の取組事例集(パンフレット)を2026年3月版に更新しました>
https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/tayou/pdf/tayou_jirei.pdf?20260608

ドリームパーソル社労士事務所
代表 野田 千秋

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