過労死・メンタル不調は「大企業だけの問題」ではありません
令和8年7月15日、厚生労働省は「令和7年度 過労死等の労災補償状況」を公表しました。
この調査は、長時間労働や仕事による強いストレスが原因となった、
- 脳・心臓疾患
- 精神障害
について、労災請求件数や労災認定(支給決定)件数を取りまとめたものです。
今回の公表結果で特に注目すべき点は、
精神障害による労災認定件数が7年連続で過去最多を更新したこと
です。
これは単なる健康問題ではありません。
企業にとっては、
- 離職
- 採用難
- 生産性低下
- ハラスメント問題
- 労務トラブル
につながる重要な経営課題です。
過労死等の労災請求件数は6,212件へ増加
令和7年度の過労死等に関する労災請求件数は、
6,212件
となり、前年度より1,402件増加しました。
また、労災認定された支給決定件数は、
1,310件
となっています。
そのうち死亡・自殺(未遂を含む)は、
145件
でした。
数字だけを見ると一部の特殊なケースと思われるかもしれません。
しかし、人手不足や業務量増加が続く中小企業においても、従業員の健康管理は経営リスクとして考える必要があります。
精神障害の労災認定が過去最多
今回、特に注目されているのが精神障害に関する労災です。
精神障害に関する労災請求件数は、
4,958件
となり、前年度より1,178件増加しました。
また、支給決定件数は、
1,082件
となり、過去最高を更新しています。
さらに、自殺(未遂を含む)に関する請求件数も増加しており、職場におけるメンタルヘルス対策の重要性が改めて浮き彫りになりました。
労災認定の原因トップは「パワーハラスメント」
精神障害の労災認定において、原因となった出来事で最も多かったものは、
① 上司等からパワーハラスメントを受けた
222件
② 顧客・取引先等から著しい迷惑行為を受けた、またはセクシュアルハラスメントを受けた
127件
③ 仕事内容・仕事量の大きな変化
113件
となっています。
特に注目すべきなのは、
職場内の人間関係や管理職の関わり方が、従業員の心身に大きな影響を与えている
という点です。
中小企業経営者が今見直すべき3つのポイント
① 管理職教育は「企業防衛」である
パワーハラスメントの多くは、加害意識がないまま発生しています。
例えば、
- 「昔はこれくらい普通だった」
- 「本人のためを思って厳しく指導した」
- 「忙しいから仕方ない」
という考え方が、現在ではハラスメントと判断される可能性があります。
管理職には、
- 適切な指導方法
- 部下とのコミュニケーション
- アンガーマネジメント
- 相談対応
などの教育が必要です。
管理職教育は、社員を守るだけでなく、会社を守る取組でもあります。
② メンタル不調を「本人の問題」にしない
メンタル不調が発生すると、
「本人が弱いから」
「本人の性格の問題」
と考えてしまうケースがあります。
しかし実際には、
- 長時間労働
- 過度な業務負担
- 職場の人間関係
- 不公平な評価
- 上司との関係
など、職場環境が大きく影響しています。
企業には、
- 定期的な面談
- ストレスチェック
- 相談体制
- 業務量の調整
など、早期発見・早期対応の仕組みづくりが求められます。
③ 「辞めない会社づくり」が最大の採用戦略
現在、多くの中小企業が、
「求人を出しても応募がない」
「採用してもすぐ辞めてしまう」
という課題を抱えています。
しかし、これから重要なのは、
採用する力より、定着させる力
です。
社員が安心して働ける会社には、
- 明確なルール
- 公平な評価制度
- キャリア形成支援
- 良好な職場風土
- 健康を守る仕組み
があります。
働きやすい職場づくりは、そのまま採用力につながります。
社労士から経営者へのメッセージ
過労死や精神障害による労災問題は、決して一部の大企業だけの問題ではありません。
特に中小企業では、
- 経営者と社員の距離が近い
- 管理職教育が十分でない
- 人手不足で一人あたりの負担が大きい
という特徴があり、早めの対策が重要です。
これからの企業経営に必要なのは、
「社員を守る仕組み」=「会社を成長させる仕組み」
という考え方です。
就業規則、評価制度、管理職教育、ハラスメント対策、メンタルヘルス対策など、人事労務の仕組みを整えることが、企業の持続的成長につながります。
社労士は、トラブル発生後の対応だけではなく、トラブルを未然に防ぎ、人が定着する職場づくりを支援する専門家です。
よくある質問(FAQ)
Q1.精神障害による労災認定が増えている原因は何ですか?
A. パワーハラスメント、顧客等からの迷惑行為、業務量の大きな変化など、職場で受ける心理的負荷が主な要因となっています。
Q2.中小企業でもメンタルヘルス対策は必要ですか?
A. 必要です。企業規模に関係なく、従業員の健康管理やハラスメント防止は、離職防止や労務リスク低減につながります。
Q3.経営者が最初に取り組むべき対策は何ですか?
A. 管理職教育、就業規則やハラスメント防止ルールの整備、定期的な社員面談など、「問題が起きる前の仕組みづくり」が重要です。
参考資料
<令和7年度「過労死等の労災補償状況」を公表します>
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74476.html
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